設計力がないのに金に目がくらんで「設計」しちゃうのが一番の問題

外注と同じ仕事しかしないなら辞めろを読んでいくつか思うところがあったので、表記をそろえるために「外注」と言う言葉を「下請け」に置き換えて書こうと思います。

あらかじめ用語の説明(定義)をしておくと、「元請け」というのは大手のシステム会社のことで、「下請け」というのは開発を専門にやっている会社です。

一般に「元請け」はIBMNTT富士通といった
大企業の子会社である場合が多く、「下請け」はそれらのさらに子会社、つまり孫会社で(資本関係はなくても力関係上似たような立場に)あったりします。

注文が入ってから外注するまでの流れ

1.まずは、「元請け」に注文が入ります。


当然ながら大企業は名前も売れてて信頼もあるので、その子会社である「元請け」にはよく仕事の依頼が来ます。それを狙ってか、会社名の一部に親会社の名前を入れているケースが多いように見受けられます。




2.「元請け」は「下請け」に開発を外注します。


「元請け」が自分で開発しない理由としては以下があります。

・開発のための人員を有していない
・開発のノウハウは「下請け」が持っていることが多い
・実際に手を動かして作るのは利益率が低いので外に振るという経営判断

3番目などは建設業界の構造とも似ているかもしれません。


以上から、「元請け」と「下請け」の本来の役割

元請け・・・営業
下請け・・・開発

であると考えられます。

問題の核は「設計」にあり

では、残った「設計」は誰の役割なのでしょうか。

ここでいう「設計」というのは要件定義等の顧客対応を含むシステムの設計全般のことです。


要件定義には、見積もりや人員の確保や工数計算が関係してきます。そのため「設計」という作業にはシステムのディレクションやITコンサルティングの作業が付いてきますが、ここで挙げたものを含めた広義の設計をここでの「設計」と定義して話を進めます。


「設計」には以下の大きな特徴があります。

・「設計」は単価が高い(つまり儲かる)
・「設計」には技術力が必要
・「設計」を失敗すると大変なことになる(デスマーチ・債権不履行.etc)

つまり「設計」は「技術力が必要」である上、とても「重要性が高い」のです。
その重要性を鑑みると、建築業における構造計算その他の業務のように国家資格で縛っても良いんじゃないかと思えるほどです。

欲に目がくらんで力不足なのに手を出してしまう

先に「元請け=営業」「下請け=開発」と書きましたが、では「設計」をするのはどちらの役割かというと、

両者に設計力があるならどちらでもよいということになります。

ただし、「元請け」に設計力が無い場合は「下請け」が行うべきであり「下請け」に設計力が無い場合は「元請け」が行うべきです。


では、両方に設計力が無い場合は?

「注文を受けない」というのが正しい選択ではないでしょうか。もしくは、それでも受ける場合は「設計」ができる会社を探し、そこに「設計」をお願いするのは本来の筋でしょう。

これらは至極当たり前のことです。


しかし、実際はどうでしょう。


まだこの業界の中に入り込んでそれほど久しくありませんが、どう見ても設計力の有無に関わらず「元請け」が設計をやるという事態が横行しているように見受けられます。

この原因として考えられるのは

・仕事を取って来る側の論理が通りやすい
・企業の大小による暗黙の力関係

そしてなにより

・設計が儲かる

これが大きいのではないでしょうか。


「設計」を他に委託した場合、「元請け」はただの営業会社に成り果ててしまうので、「設計」を放棄することは売り上げや利益率に大きな影響を与えます。

欲に目が眩んだ先の結末

だからと言って設計力がないのに「設計」を行えば大変な事態になるのは目に見えてます。


しかし、こういったことが原因で数億円規模の損害を生み出したプロジェクトを私は何件か知っています。そのうちの一件は昔の会社にいたときにリアルタイムで出くわしました。

あとがき

繰り返しになりますが一番の問題は設計力のない企業が「設計」をやることであって、
先に挙げた諸企業に設計力があるかどうかについては一言も述べておりませんので悪しからず。

それを論じるのはこの記事の本意ではないのでご自分で調べていただければと思います。



2008/10/22 21:33 文法的におかしい文言などを微修正

2008/10/23 01:22 追記1

関連エントリ:

http://d.hatena.ne.jp/katzchang/20081022/p2by id:katzchangさん

下請け側のワークハックというか、とるべき姿勢が簡潔にまとまっていて一人うなずいてました。
現実問題としては、この原則に従って「仕様≒元請け」と向き合っていくべきだと私も同感の思いです。